床矯正
床矯正
床矯正治療は、抜歯を伴うことが多いワイヤー矯正が一般的に普及していますが、なるべく抜歯をせずに顎(あご)の幅を広げて矯正する「床矯正(しょうきょうせい)」という治療法もあります。 総入れ歯のような床(しょう:顎に密着する部分)のある拡大装置を固定源にして、少しずつ歯を動かしたり顎を拡大したりすることで、歯並びやかみ合わせを整えていきます。
これは歯科医師主導でなく、患者様自身によってネジを回して処置を進めて頂きます。 ケースによっては成人の方も対象になることがありますが、主に顎の骨の発育が活発な6~11歳くらいのお子さんが対象となる治療です。この時期であれば、顎の骨の成長を利用して効率良く拡大ができるためです。
床矯正は一般的に馴染の薄い矯正法であるものの、小児矯正においては重要な役割を担うこともあります。 当院では、本格矯正に入る前に積極的にこの方法を使用しております。
床矯正は主に顎の骨の幅を広げるために用いられます。たとえば上顎の幅が狭い場合、歯がきれいに並ぶためのスペースが不足し、その結果、出っ歯や叢生(そうせい:歯がでこぼこに生えている歯並び)などを引き起こしてしまいます。このような状態を少しずつ顎の横幅を広げて、歯を正しい位置に移動するのが床矯正です。
具体的にはレジン(プラスチック素材)で作られたアクティブプレートと呼ばれる床矯正装置を用います。 床にはワイヤーや拡大幅を調整するネジが埋め込まれており、1週間に2回といった決められたペースでネジを回転させ、少しずつ拡大していきます。簡単に取り外しが可能で、食事や歯みがき時、発音障害で支障が出るとき(国語、英語、音楽の授業、職種によって業務に支障が出る場合)などは取り外します。
装着時間が多いほど治療は早期に終了しますが、1日に14時間以上装着できれば治療は可能です。言い換えれば、装着時間が長い程、処置時間の短縮になるとも言えます。 床矯正の機能は主に顎の骨の幅を広げることで、歯並びの細かい調整や歯を根元から大きく移動させることはできません。歯並びが極端に悪い重度の歯列不正の改善も不向きです。しかしながら抜歯前提の矯正であっても、ある程度、床装置で歯牙を動かし、ワイヤー装着時の痛みの軽減を図る時にも使用する場合は有ります。
下記は床矯正の適応となる不正咬合の種類と床矯正を開始する時期の目安です。
上顎前突(じょうがくぜんとつ)
上顎の前歯が前に傾斜していたり、突き出ていたりする状態で、一般的に「出っ歯」と呼ばれています。 床矯正の推奨時期:6歳くらい(症例によっては主訴が上の前歯であっても、装置を下に入れて上との咬み合わせを誘導する場合あります)
下顎前突(かがくぜんとつ)
下顎が上顎よりも前に突き出ている状態で、横顔がしゃくれたように見えます。かみ合わせが反対になるので「反対咬合」、あるいは「受け口」とも呼ばれています。 床矯正の推奨時期:6歳くらい(もしこの年令より前に受け口が確認されている場合は、この年令より前に積極的に介入する場合有ります)
上下顎前突(じょうげがくぜんとつ)
上下の歯が前に突き出ている状態で、顎の骨に問題がある場合と、歯だけが前に出ている場合とがあります。うまく噛むことができず、見た目も良くありません。唇を自然に閉じていられない場合もあります。 床矯正の推奨時期:6歳くらい
叢生(そうせい)(八重歯・乱ぐい歯)
歯並びがでこぼこな乱ぐい歯、犬歯が前に突き出た八重歯などのことをいいます。顎が小さいと歯が生える十分なスペースがないため、歯と歯が重なり合って、叢生が生じると考えられています。 床矯正の推奨時期:7~9歳(拡大量が5㎜以上必要であれば、これより1~2年早く始めるのが良い時も有ります)
開咬(かいこう)
口を閉じてもすき間ができ、上下の歯がきちんとかみ合わない状態です。前歯で食べ物をうまく噛み切ることができないだけでなく、正しく発音ができなかったり、咀嚼(そしゃく)がうまくできなかったりすることもあります。 床矯正の推奨時期:6歳くらい(姿勢や呼吸の仕方も悪い時が有るので、装置以外のトレーニングも必須です)
過蓋咬合(かがいこうごう)
上の歯が下の歯に深く被ってしまっている状態です。このため顔が短く見えることがあります。上下の歯が過剰に接触し、歯を傷つけてしまうこともあります。 床矯正の推奨時期:6歳くらい(下顎後退が原因なのか、上顎が本当に前に出ているのかが診断をきちんとするのが先で、実際に患者様のお口の中を見ての判断となります)
交叉咬合(こうさこうごう)
部分的に上下の歯のかみ合わせが反対になっている状態です。顎の関節に悪影響を及ぼし、顎関節症を引き起こすこともあります。 床矯正の推奨時期:7~9歳(片側咬みしたりするので、顔の偏位を起こしたりする事が有るので、早めに気付いたら処置をしていくのが必要だと考えます)
※開始推奨時期から外れている場合でもお気軽にご相談ください。
床矯正は、比較的手軽にできる矯正治療であるため、多くのメリットが得られます。同時にデメリットも存在しているので、それらをバランス良く理解しておくことが大切です。
床矯正とワイヤー矯正の最大の違いは、取り外しが可能かどうかです。床矯正は、患者さんの意思で自由に取り外すことができるので、日常生活で不便を感じることが少ないといえます。具体的には以下のようなメリットがあります。
通常の矯正で用いられるブラケットやワイヤーは、ご自身で取り外すことができません。常にこれらを装着しているため、歯みがきがしにくく食べかすや歯垢が溜まりやすいという問題があります。ワイヤー矯正治療中にむし歯になることもあります。 床矯正であれば、取り外しが可能で普段通りに歯みがきが可能です。歯に直接矯正装置を装着する方法と比べ、むし歯になりにくいといえるでしょう。
歯に矯正装置を固定するワイヤー矯正では、硬いものや粘着性のある食べものを避けるなどの制限があります。取り外しが可能な床矯正にはこうした制限はなく、好きなものを食べることができます。
床矯正は基本的に弱い力でゆっくり矯正していくため、ワイヤー矯正のような強い力はかかりにくく、治療に伴う痛みも少ないといえます。
このほか、お手入れが簡単、ワイヤー矯正よりも費用が安いということもメリットとして挙げられます。
床矯正は、装置の取り外しが可能というメリットが、逆に治療を進めるうえでデメリットになることがあります。装置の種類によっても異なりますが、床矯正は最低でも1日14時間以上の装着が必要となります。この装着時間を守れない場合、治療計画どおりの結果が得られなくなってしまうので、しっかり自己管理していくことが重要です。 逆に言えば、さぼろうと思えばいくらでもさぼれるので、やり始めたら明確な意思を持ってする事が大切です。
床矯正の治療終了後に矯正装置を取り外すと、後戻りすることがあります。この点は他の矯正治療にも同じことが言えますが、顎の成長に生活習慣や口周りの筋肉の使い方などが関係しているためです。後戻り防止にはMFTと言われる訓練を処置終了後にある程度の期間をやって頂くのが後戻り防止につながります。
床矯正による顎の拡大だけで歯並びがきれいにならないこともあります。その場合、ワイヤー矯正を併用することがあります。
矯正装置の形態が複雑で、サイズが大きいこともデメリットとして挙げられます。装着時に違和感・異物感を感じたり、発音障害を起こしたりするからです。この点は、入れ歯と同様に、通常1~2週間で慣れていきます。どうしても慣れない場合は、装置の改変か改造を行う場合も有ります。
床矯正の治療期間は、顎がどの程度発達しているかによって変わります。まずは一度ご来院ください。個人個人で状態が違う為、本当に床矯正の適応かを判断させて頂きます。 装置の装着は1日14時間以上が推奨されており、装着している時間が長ければ長いほど良い結果が得られます。歯は戻ろうとする力が強いため、半日(12時間)以上外していると戻ってしまい、こうなると治療も進まず、装置が壊れるなどのトラブルが生じてきます。取り外しが可能でも、半日以上もの間、矯正装置を装着することに苦痛を感じる方もいるかもしれません。こうしたことも踏まえて、床矯正を受けるかどうかを検討しましょう。
項目 | 料金 |
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矯正相談 | 2,200円(税込) |